毎月の治療費の負担を軽くするしくみはあるの?
Q. 毎月の治療費の負担を軽くするしくみはあるの?
A.主なものに、高額療養費の「世帯合算」「多数回該当」というしくみがあります。
手術が終わって退院した6月は、入院と外来を併せて15万円くらいを支払ったという話をしましたが、翌月からも毎月治療で通院しています。それで、毎月の外来でかかる薬代がとても高額でびっくりしました!
「限度額適用認定証」を使っているのですが、毎月8万数千円の自己負担で…。これがずっと続くかと思うと心配で、心配で…。
病気の治療だけでも大きな負担なのに、毎月の治療にかかるお金の心配もしなくてはいけないのは本当に大変ですよね。
こんなときに負担を軽くするしくみが公的医療保険にはいくつか用意されています。それが「世帯合算」と「多数回該当」と呼ばれるしくみです。
世帯合算??? 多数回該当??? いろんな言葉が出てくるけど、ついていけるかしら?
大丈夫ですよ! 知っておくと、とても役に立ちますので、ぜひ覚えておいて下さい。
では、まずは「世帯合算」について見ていきましょう。
世帯合算
では、まずは、それぞれの自己負担限度額を計算してみましょう。入院分と通院分は、通常は別々の計算になります。(4.「「自己負担限度額」について詳しく知りたい!」参照)
この計算式にそれぞれを当てはめます。
さきほど、テリアさんが、入院と外来した6月に15万円位の自己負担をされているとおっしゃっていたのは、そういうことなんですね。
しかし、「世帯合算」という制度は、世帯の中で自己負担が2万1000円以上となる場合、その分を合計(合算)して、「自己負担限度額」とすることができるのです。
では、次に「世帯合算」を使って計算してみましょう。
通常の計算式で計算したものより、5万8000円分負担が軽くなることが分かります。こうやって同じ月内で世帯分の負担を合算(合計)する計算を「世帯合算」といいます。
そうなんだ~。ということは、私の6月分は「世帯合算」という制度を使えば、15万円ではなくて、9万円程度に収まるということですか。それはうれしいかも…。
あ、そうだ! 今、思い出しました! 6月は、まさおさんも胃の調子が悪いといって、病院にかかって6000円を自己負担していました。その分も合算できますよね?
いえいえ、自己負担が2万1000円以上のものだけが合算の対象なのです※1。ですので、まさおさんの自己負担の6000円は世帯合算の対象にはならないんです。
1 70歳以上の方の世帯合算は、自己負担額2万1000円以上という条件はなく、自己負担額の額にかかわらず全て合算することができます。
何でも合算できるわけではないのね。残念!
そうなんですよ。世帯合算は、①同じ月内で ②同じ世帯で、自己負担額が2万1000円以上ある場合に限られます。「世帯」の範囲については、7.「高額療養費の上手な活用法は?」で説明しましょう。
「世帯合算」については理解できました。ただ、毎月の出費を最小限に抑えても、それが何か月も続くかと思うと、とても不安になってしまいます。
では、自己負担を軽くする、もうひとつのしくみも紹介しましょう。それは「多数回該当」と呼ばれているものです。
多数回該当
自己負担額が過去1年間に3月(3回)以上、高額療養費に該当していた場合、4月(4回)目からは自己負担額が少なくなるしくみを「多数回該当」といいます。4月(4回)目以降になると、自己負担限度額が4万4400円で済むということになります。
テリアさんのように高額な治療が毎月かかるとなると、自己負担額も半端な額ではなくなってきますよね。そんなときに利用したいしくみです。下の例を見てみましょう(図5)。
多数回該当の場合の自己負担限度額は、所得区分に応じて変わります。
(1.「妻にがんの診断が! お金の用意どうしよう?」図3参照))
??「過去1年間に3回以上」って、よく分からないのですが?
そうですね。分かりにくいですよね。「過去1年間に3月(回)以上、高額療養費に該当した場合」とは、起点となる月から1年間過去にさかのぼったとき、高額療養費に該当する月が3回以上ある場合のことです。
次の図の例1と例2で説明しましょう。
例えば、「今年の8月」は自己負担額が高額療養費に該当した月だったとします。これが多数回該当にあたるかどうかは、8月から1年間さかのぼった範囲(今年の8月から昨年の9月までの間)で、高額療養費に該当する月が8月の前に3月(回)以上あることが必要です。
例1では、昨年の11月と今年の3月・6月と、8月の前に既に3回高額療養費に該当しています。さらに、今年の8月も高額療養費に該当し、4回目となるので、8月は多数回該当となり、自己負担は4万4400円で済むことになります。それに対して例2では、今年8月は、1年間さかのぼった範囲では3回目となるため、多数回該当には該当しません。したがって例2の場合の8月分の自己負担限度額は、通常の自己負担限度額のままとなります。
回数のカウントは、年(1月~12月)とか、年度(4月~翌年3月)ではなくて、受診した月からさかのぼって1年、で行うのですね。結構、めんどうですね。
でも、4回目以降からは限度額が半分以下くらいになるってことですね…。それはすごくありがたいですね。ぜひ利用してみようと思います!
ただし、多くの公的医療保険では、自分で請求手続きをする必要があります。
えっ! 何だか急にハードルが上がりました。自分で請求しないといけないのですか? ちょっと大変そう…。
請求手続きや請求先については、10.「医療費のこと、どこに相談したらいいの?」で説明することにします。
記載されている内容およびサイトの情報は2023年11月現在のものです。