上司や同僚にどう伝えたらよいか迷います。

会社へ伝える範囲を整理してみましょう。

 会社側の理解と協力は、制度を利用する際にも、業務上の協力や配慮を得るためにも必要です。しかし、あなたの病名を会社が知ることで、もしかしたら働きづらい環境になるかもしれません。

 「これがよい」という正解はありませんが、職場との関係も考えながら、伝える範囲と内容を考えます。これまでの勤務状況や組織の背景をじっくり確認しながら整理してみましょう。

会社に伝える必要性は?

 職場で病名を公表するかしないかは、多くの仲間が悩んでいます。

 企業には、安全配慮義務(「企業の安全配慮義務」について 参照)があります。そのため、あなたが配慮を望む事項があれば、その気持ちや状況を人事担当者などへ具体的に伝える必要があります。病名よりも、配慮してほしいことをきちんと伝えましょう。

誰に伝えるべきか

 まず、「伝えることに関して、なにが不安なのか?」を考えてみましょう。あなたが最終的に望む周囲とのあり方を整理したうえで、本当に伝えるべき人物はだれかということをゆっくり考えてみましょう。

 身体のこと、これからの治療のこと、そして仕事のこと……。誰に、何を、どこまで伝えればよいのでしょうか。場合によっては本人からではなく、直属の上司などの口から同僚への配慮事項を伝えた方がよい場合もあります。

 実際に伝えるシーンを想定し、「誰にどんな順序でいつ伝えるか」まで考えておくと、心が少し楽になるかもしれません。

上司
上司

 一般的に、直属の上司には、制度や休暇の調整だけではなく、業務上の関係機関(人事や他部署、産業保健スタッフなど)との連絡調整の役割があります。
 また、部下の状態に注意を向け、安全配慮を現場で行う役割も重要です。「病名」を言う必要は必ずしもありませんが、悩みや困っていることはきちんとこまめに伝えるようにしましょう。

人事部
人事部<

 長期の休暇が必要な場合など、制度の支援を得る上では、人事部の協力は必要不可欠なものになっています。
 今後のキャリアのことを考えると「伝えたくない」という方もいますが、その結果としてさまざまな負担が生じる可能性もあるかもしれません。働く上で配慮が必要なことがあれば、それをきちんと伝えることが大切です。

産業保健スタッフ
産業保健スタッフ

 産業医・産業保健師がいる職場は必ずしも多くありませんが、企業内の制度の情報を多く持っている産業保健スタッフは、職場では身近な協力者になる可能性もあります。
 支援体制は会社によってさまざまですが、まずは相談してみるのもひとつの方法です。

同僚や部下
同僚や部下

 必ずしも同僚や部下へ知らせる義務はありません。
 職種によっては、同僚や部下などの業務上の協力、配慮を得ることが必要になるかもしれませんが、一方で「普通に接して欲しい」「(女性が)男性ばかりの職場でわかってもらえない」など、それぞれ状況が異なります。職場の雰囲気に応じて、少しずつ情報開示していくこともひとつの方法です(6.「復職をしました。仕事と治療を無理せず両立したいです。」参照)。

「企業の安全配慮義務」について

 企業には労働安全衛生法の定めなどにより、労働者の生命・身体が業務上の危険から守られるよう配慮しなければならないという義務があります。

 社員が心身の健康を害することを企業が予測できた可能性(予見可能性)があり、それを企業として回避する手段があったにもかかわらず(結果回避可能性)、手段を講じなかった場合に、安全(健康)配慮義務違反となります。

 企業における健康診断などは、この安全配慮義務の一環と言えるでしょう。

 一方、障害者雇用促進法に基づき、長期にわたり障害があり、働くことに相当の制限がある従業員を対象に(がんやその他の疾病の副作用や後遺症も対象であり、障害者手帳の有無は問わない)、その従業員が働き続けられるように企業側には規模や実情に応じた配慮(合理的配慮)を行うことが求められています。

 「配慮」を得るには従業員と企業との間で十分な対話が必要となってきます。主治医意見書は、その対話を支えるツールとなると言えるでしょう。

伝えるべき内容とタイミングは?

 伝えるべき内容と時期については、次のように整理されます。あなた自身の気持ちや身体の声を大切にし、タイミングに応じてこまめに報告をしていきましょう。

治療前に伝えるべき内容:休暇を必要とする期間、治療や検査のスケジュール、配慮事項。治療中に伝えるべき内容:長くなるようなら休暇期間(短期間であれば必ずしも必要でない)、お見舞い(入院中)などの可・不可、万が一の連絡先、連絡手段。復職前に伝えるべき内容:復職可能な時期、手続き、配慮事項などの確認、病気を公表する範囲。復職後に伝えるべき内容:勤務時間の調整、業務量の調整、配慮事項の調整。→少しずつ復帰

記載されている内容およびサイトの情報は2023年10月現在のものです。