入院中や外来治療中に利用できる制度はあるのでしょうか?
利用できる制度を確認してみましょう。
治療をしながら仕事を続ける上で、欠かせない情報が働くことを支える「制度」です。「利用できる制度を最大限に活用する」ことは、仕事と治療の両立において、重要な解決策のひとつです。
就業規則など社内制度に関すること
従業員が10人以上の会社では、会社で働くときのルールブックとして就業規則があります。就業規則は、とても重要な情報源ですが「入社時にもらったが、一度も読んだことがない」という方がほとんどです。まずは、あなたが勤務している会社の社内制度を確認してみましょう。会社の人事担当の方に協力を求めてみるのもよいでしょう。また有期雇用契約などの場合は、労働条件通知書や雇用契約書を確認してみましょう。
例えば、入院手術により会社を2週間休まなければならないという場合に利用できる制度を考えてみます。一般的には、年次有給休暇を使用する、あるいは私傷病休職制度がある企業ではそれを利用します。企業によっては、永年勤続のリフレッシュ休暇があったり、積立休暇(時効消滅した年次有給休暇)があったりして、それを利用できるケースもあるでしょう。
利用できる制度が明確化されることで、治療や復職のスケジュール、その後の通院スケジュールも、より具体化できます。
健康保険など公的制度に関すること
健康保険は、雇用主や雇用形態によって加入している保険、受けられる保険給付が異なるケースがあります。どの保険に加入していて(健康保険証に記載されています)、どの保険給付が受けられるのかをあなた自身が確認し、どのような手続きをするのかまで整理し、そのうえで、実際に手続きをとることが大切です。
がんなどの重い病気にかかった場合、利用できる公的制度として、高額療養費や傷病手当金があります。人事担当者や健康保険組合に確認してみましょう。
主な健康保険制度 | |
---|---|
法人 | 全国健康保険協会(協会けんぽ) 健康保険組合(企業・業種別) |
個人事業(※) | 国民健康保険(市町村) 国民健康保険組合(業種別) |
公務員 | 各種共済組合 |
一部の業種を除き、従業員5名以上の事業所については、全国健康保険協会(協会けんぽ)、健康保険組合に加入
健康保険の「傷病手当金」制度について
- 給与が減額または無給になったら?
- 傷病手当金の請求をしましょう
国民健康保険以外の各健康保険では、「傷病手当金」という制度があり、治療を理由に休んだことによってカットされた給与をカバーする仕組みがあります。
カバーできる期間は、通算して1年6ヶ月間です。
手続き方法や給付内容の詳細は、あなた自身が加入している健康保険など(保険証に連絡先が記載されています)や会社の事務担当者などに聞いてみましょう。
お金に関する悩みや疑問などは、弊社発行の「ここが知りたい!」シリーズで詳しく解説しています。ぜひご活用ください。
医療費の公的助成制度に関すること
- 医療費の高額な支払いに困ったら?
- 高額療養費の限度額適用認定証を申請しましょう
高額な医療費の窓口負担を軽減する方法として、高額療養費の「限度額適用認定証」があります。
これは、各健康保険窓口で事前に申請をすれば、医療機関での窓口支払いが一定額で済むというものです。事前申請に本人が行けないときは、家族や勤務先、社会保険労務士(※)などが代行することもできます。もし事前に申請ができなかった場合は、高額療養費支給申請をおこなって後日払い戻すことも可能です。マイナンバーカードを健康保険証として利用できる医療機関によっては、「限度額適用認定証」がなくても、限度額を超える支払いが免除されることがあります。医療機関の窓口で確認しましょう。
治療や通院、療養生活などにかかる費用は、病状によってさまざまです。費用や助成制度についての相談は、各医療機関の相談窓口や、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターでも受けつけています。がん相談支援センターは、その病院を受診していなくても原則利用できますので、困ったことがあったら遠慮なく相談してみましょう。
社会保険に関する法令に基づく申請を代行できる国家資格の専門家
- がん相談支援センターを探す
- 国立がん研究センター「がん情報サービス」
- https://ganjoho.jp
「両立支援の仕組み」に関すること
- 会社に病気のこと、今後の働き方のこと、どう伝えようかと困ったら?
- 「両立支援の仕組み」の活用を検討しましょう
最近では、治療と仕事の両立を目指す患者さんのために、会社と医療機関が連携し、働き方をサポートする仕組みの活用が、少しずつ広がってきています。
あなたと会社と医療機関が情報を共有することで、治療のために休むべき期間や復職後の配慮すべきことが明確になり、会社にとってもあなたにとっても、お互いの意思疎通が円滑になる利点があります。
図1 両立支援の仕組みと流れ
利用するには「相談支援センター」などの窓口へ
こうした両立支援の仕組みをどうやって使っていいか分からないと思われる方も多いと思います。そんなときは、病院にある「相談支援センター」に相談してみましょう。また、「相談支援センター」が通院している病院にない場合、近くのがん診療連携拠点病院にある「相談支援センター」を利用することもできます。
なお、この両立支援の仕組みによって、医療機関側には 「療養・就労両立支援指導料」という報酬が治療費と同様に健康保険に請求できることになっていますので、遠慮せず活用してください(ただし、あなた自身にも一部自己負担が生じます)。
具体的な流れと必要な書類
仕事と治療の両立を希望する場合、まずは本人が会社に申し出て、自分の働き方に関する書類「勤務状況提供書」を作ってもらいます(図1-①)。この書類には、あなたが日頃どのような仕事をどのぐらいしているのか記載します。それを元に主治医が、治療と仕事を両立していくために、あなたにとってどのような働き方が望ましいかを考え、あなたの治療状況や治療の見通し、必要な配慮事項等を記載した「主治医の意見書」を作成して会社(の産業医等)に提供します(図1-②)。
これらの書類の書式例を厚生労働省が公表していますが(P14-15)、会社所定の書類や病院所定の診断書に書いてもらう形でも構いません。
「主治医の意見書」の情報を基に、必要に応じて産業医等が協力し、会社側はあなたのための「両立支援プラン」を考えていきます(図1-③)
なお、今回紹介した書式例は、厚生労働省のサイト(下記)の「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」「 企業・医療機関連携マニュアル」に掲載されています。これらを医療機関や会社に持参し、記載してもらうこともひとつの方法です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000115267.html
記載されている内容およびサイトの情報は2023年10月現在のものです。