<就職前の心がまえ>
働き始めようと思います。まずは何をすればよいのでしょうか?

働く目的や意義を整理してみましょう。

 がんと診断された後、「治療に専念したかった」「体力的に仕事の継続が難しくなった」「やむを得ず転職せざるを得なくなった」など、さまざまな理由から仕事から離れた方は多いでしょう。がんを経験し、「これまでどおり働けるだろうか」と少し戸惑いながらも、再び働くことを考えている方もいるでしょう。

 仕事「を」する自分から、病気にはなったけれど仕事「も」する自分へ。新しい自分にとっての新しい働き方があるはずです。再就職への一歩を踏み出すために何が必要なのか、年収は最低限どの程度が必要なのか。「仕事」や「働き方」に対する目的や意義を整理することから始めてみましょう。

働く目的と、「病気のオキドコロ」

 まずは、「なぜ、がんになっても働きたいのか」と、あなた自身に問いかけてみることから始めてみましょう。生活のため、治療を続けるため、生きがいのため、社会との繋がりを持つため…。働く理由は人それぞれですが、なかには「新しい仕事にチャレンジしてみたくなった」という方もいます。今のあなたにとっての「働く目的」は何ですか?

 働く目的が少し見えてきたら、あなたにとっての「病気のオキドコロ」も考えてみましょう。がんの経験は、あなたの人生にどのような変化を与えたでしょうか。あなた自身を語るうえで、欠かせない出来事でしょうか。それとも隠しておきたい、忘れてしまいたい出来事でしょうか。あなたの「病気のオキドコロ」によって、病気を誰にどこまで知らせるのかが明確になり(病気の公開範囲と内容)、あなたが思い描く「仕事」や「働き方」が見えてくるかもしれません。

あなたの「今」の状況は?

 働く目的や「病気のオキドコロ」が見えてきたら、その目的を達成するために、あなたの「今」の状況を客観的にみてみましょう。あなた自身の能力と、企業が求めている能力とにズレはありませんか?

 再就職の場合、「この仕事に就きたい!」といくら希望しても、能力や経験などが相手の希望と合わなければ、採用までたどりつくことは難しくなります。これは病気をしていない人も同じです。あなた自身の「今」を、客観的に評価していくことも大切です。

整理すべきポイント

 これまでに自分が経験したり、学んだりしてきた延長なのか、全く新しい分野なのか、なぜその分野を選んだのかといった「動機」は、これからの仕事探しにあたり、重要なポイントになってきます。

「どう働きたいか?」を考えるためのポイント

  1. その仕事がこなせる体力はあるでしょうか?
  2. その仕事に見合う能力やスキルはあるでしょうか?
  3. 年収はどの程度必要でしょうか?

「どんな仕事に就きたいか?」を考えるためのポイント

  1. これまでの職務経験、スキルや興味がどう活かせるでしょうか?
  2. 新しい仕事のために職業訓練が必要でしょうか? その時間や資金はありますか?
  3. 新しい仕事の採用状況(景気動向)はどうなっているでしょうか?
  4. 役職の低いポジションでも受け入れることはできるでしょうか?
  5. 家族の理解は得られるでしょうか?

身体と心の状況を整理

 経済的な理由や将来的な不安感などから、「とにかく早く働かなくては」と気持ちが先走ることもあります。しかし、がん治療と仕事を両立させるには、身体だけではなく心も安定していることが大切です。「働かなくちゃ…」ではなく、「働きたい!」という気持ちに切り替わってきたころが、就職活動を始めるよいタイミングでしょう。

身体の声を聞くことを忘れずに

 副作用や後遺症には対処できていますか? 「長時間の立ち仕事、または、座ったままの仕事は難しい」、「人前に出たり声を出す仕事は控えたい」、「しびれがあるので細かい作業はなるべく避けたい」など、あなたの身体は働くうえで、どのような配慮が必要ですか?

 無理なく働くためには、あなた自身の身体の声に、きちんと耳を傾けることが重要です。そして、あなたの「働くこと」への思いを担当医とも共有しつつ、いつから就労可能か、どのような働き方が望ましいか、働くうえでの配慮事項などをあらかじめ確認しておきましょう。

体力に見合った仕事を探すためのポイント

  1. どのような雇用形態がよいでしょうか(正社員、契約社員、パート・アルバイトなど)?どのような職種が適しているでしょうか(営業、事務、体を動かす仕事など)?
  2. 週に何回、1日何時間なら働けるでしょうか? また、その収入はあなたの生活を維持できそうですか?
  3. 出勤時間・退社時間、時短勤務やフレックス、在宅ワークなど、利用できる制度はあるでしょうか? 配慮が必要な期間はどのくらい続くでしょうか?

大事にしたい気持ちのこと

 体力的には就労可能でも、「周囲に迷惑をかけてしまうのでは?」「働きすぎると身体によくないのでは?」などの理由から、再就職に積極的になれない場合もあります。

 あなた自身の働く姿をイメージした時、何が気になるのか、何が心配なのか、1つずつ書き出してみましょう。そして、それぞれの解決方法を考えていきましょう。解決するためには、どのようなサポートが必要ですか? 相談先はありますか? その「解決方法」こそが、職場へ希望する「配慮事項」になるでしょう。働くうえでは、身体と心のバランスが大切です。今、ここにあるあなたの気持ちも大事にしてください。

再就職への道のり

 身体と心のバランスが整ってきたら、就職活動を進めていきましょう。今の就活事情は、この 10年くらいで大きく変わっていますが、基本的な流れは「募集⇒応募書類提出⇒書類選考⇒面接⇒内定⇒入社」です。

 ハローワーク、インターネットの就職情報サイト、人材派遣会社への登録など求人システムはいくつかあります。また、最近ではがん拠点病院にハローワークが出張相談を開催している病院もあるので、積極的に利用してみましょう(3.「<情報収集と書類の準備2>仕事はどこで探したらよいでしょうか?」参照)。

大企業vs中小企業

 「企業規模」だけで比較をしてみると、一般的には大企業の方が、社内制度が充実しているので、公的な制度に社内制度を組合せることで仕事と治療を両立できる可能性が高いでしょう。

 中小企業では、大企業のような社内制度は整っていないことが多いのですが、経営者や上司の理解と配慮により、休職や短時間勤務など柔軟に対応しているところもあります。それぞれのメリット・デメリットを見極めながら、「自分に合った働き方ができる」「自分の強みを活かせる」会社を選ぶことが大切です。

縁故も重要なルート

 既存のリソースに加えて、あなた自身がこれまで培ってきた社会経験や人脈を通じて紹介してもらう「縁故」採用も、特にキャリアの長い方が転職を考える上では、重要なルートです。例えば、知人や前の会社の上司・同僚などに、求職中ということを伝えておくことも1つの方法です。あなたの仕事ぶりを直接見てきた仲間に、客観的なアドバイスを求めたり、あなたの長所や短所を指摘してもらったりすることは、これからの就職活動にきっとプラスになるはずです。

 人を探している企業との出会いは、どこにあるか分かりません。あなた自身のアンテナを広く張って、積極的に情報収集してみましょう。

ワンポイントアドバイス

 最近は、フェイスブックなどのSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)やブログなどを利用して、治療の様子や日々の生活を記録することがあります。就職活動中にいくら病歴を隠したとしても、場合によってはそれらを通じて周囲に知られてしまう原因になります。情報管理には、くれぐれも注意しましょう。

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