5.柔軟な姿勢でキャリア形成を考える

キャリアを考える際に重要な多角的で俯瞰的な視点

新規就労を考えている若者は、目の前の就活だけを凝視していて、そこから目が離れることがないのではないか?もしくは、多角的で俯瞰的な視点でキャリア形成が考えられていないのではないか?と筆者は常々感じています。これは、がん患者さんであっても、健康な学生でも同じです。“今、目の前にある就活しか視界に入ってきていない状態”にある人が、(皆さんがよく口にする)「自分に合った仕事」を選ぶことや「長く続けていける仕事」を見つけることができるでしょうか?そうではないはずです。仮に、がんで仕事をする機会が短かったとしても、目の前にある、いわゆる一般的な就活だけに捉われ過ぎるのは、良い選択とはいえません。なぜなら、人の好みや能力、状況や状態は常に変化し続けるものだからです。その上、近年は特に変化の激しい時代ですから、世の中の変化にも自ら順応していくことが求められています。そのためには柔軟な姿勢で、かつ、多角的で俯瞰的な視点を持ち続けることが必要で、その結果、「自分に合った仕事」や「長く続けていける仕事」を得ることができるのです。

自分らしいキャリアは生涯をかけて作り上げていく

変化の激しい時代においては、新卒時に選んだ仕事、その時点で決まった仕事を生涯続けていく、というのは時代に合ったキャリア形成とはいえません。つまり、世の中の変化に柔軟に対応していく姿勢が常に求められているわけですが、一方で世の中の働き方自体も変化し、多種多様になっています。コロナ禍をきっかけに在宅勤務が一般化したり、アバターを使って接客するアパレル販売店やコンビニが出てきたり。はたまた、自宅にいながら店舗のロボットに接客させる「ロボカフェ」なども出てきています。働き方の多様性は急速に広がっているのです。

仕事をすることだけが人生のすべてではないですが、社会に出れば仕事をすることに人は人生の多くの時間を割いていきます。「人は生涯をかけてその人らしくなっていく」これは精神科医で心理学者のC.G.ユングの唱えた「個性化の過程」概念に関する考え方・捉え方ですが、“その人らしさ”は、仕事をすることによっても形成されていくのではないか、と筆者は考えています。

ここまで述べてきたように、今どきのキャリア形成は、多角的で俯瞰的な姿勢で考え続けることが求められます。そして、「あなたらしい自己の形成」は生涯かけて作り上げていくものですから、慌てず、腰を据えて、そして、柔軟な姿勢で自分の仕事(自らのキャリア形成)について考え、自分自身を育てていってくださることを願っています。

執筆:岡田 晃 先生(一般社団法人 治療と仕事の両立支援ネット-ブリッジ キャリアコンサルタント)

2023年10月公開