2.どんな仕事を選ぶ?

就活の原点は「自分と相手を知ること」

「(仕事は)何をやったらいいんだろう?」・「自分は何ができるんだろう?」など、これからの方向性を考え始めたとき、まず初めに取り組むべき原点ともいえることが2つあります。それは、「自己分析」であり、「業界研究・職種研究」です。言い換えると、「自分を知ること」と「相手を知ること」ともいえます。仕事選びでミスマッチを防ぐには、この2つをどちらも検討する必要があります。これは、新卒の人はもちろん、何年か仕事を経験した時点で転職や方向性を考えるときでも同じです。

自己分析や業界研究・職種研究のポイント

がん患者さんの場合、この就活の原点に加えて、更に取り組まなければならない事柄があります。それは、「自己分析」に関しては、「病気(がん)を抱えた自分」をどう受け止めているか、ということです。それはつまり、自分の体調に関する認識や理解であったり、通院頻度や今後の見通しはどうなのか?という、病気にまつわる現状を把握しておくということです。

具体的には、がんの治療を受けた人に多い症状として、疲れやすさ、痛み、しびれ、免疫力の低下、集中力の低下などがあり、それらが仕事にどう影響するか?を認識・理解しておくことが必要で、これらが仕事選びの上でカギになるともいえます。通院頻度や今後の治療の見通しなどは、主治医の先生や看護師に確認すればわかることですが、“自分の体に関すること”はある意味自分にしか正確にはわからないので、その点は、よくよく自分の体と対話をして、「今の自分にできる仕事は何なのか?」という側面を含め検討していく必要があるでしょう。

また、「業界研究・職種研究」に関しても、より丁寧に考えていく必要があります。例えば、志望する仕事は、体力的に大丈夫そうな仕事なのか?暑さや寒さなどの環境面はどうか?力仕事や屋外でやる仕事も含まれているか?長期の出張があって治療に影響がないか?(体力的な課題を感じている場合など)残業時間はどれぐらいあるのか?などなど。こうしたより具体的な働き方や環境がかかわってくるので、就活に取り組む際は、慎重に考える必要があるのです。

キャリアを考えるタイミングは今だけではない

がん患者さんの場合、「自己分析」や「業界研究・職種研究」に関しては、一般的な就活の準備に加えて、「病気(がん)を抱えた自分」をより丁寧に、かつ、慎重に感じ取り、理解していく必要があります。その丁寧な取り組みによって、長く勤める仕事に出会うことができるか、そうでないか、が決まってきます。がん患者さんであるあなたの、現時点での仕事を決めていくのは、とても慎重になるのではないでしょうか。ただ、こんなこともいえます。自分に合った仕事を見つけるのは必ずしも今すぐということとは限りません。自分にできる仕事は年々変化していくでしょう。また、現代は変化の激しい時代ですので、今決めた仕事を未来永劫続けていくというのは現実的ではないともいえます。その意味で今どきのキャリア形成は、長い時間をかけて、つまり、働きながらも将来を見続けていく必要があるのです。

執筆:岡田 晃 先生(一般社団法人 治療と仕事の両立支援ネット-ブリッジ キャリアコンサルタント)

2023年10月公開