4つの方法があります
妊よう性温存療法には、女性が対象の「卵子(未受精卵)凍結保存」、「胚(受精卵)凍結保存」、「卵巣組織凍結保存」と、男性が対象の「精子凍結保存」という4つの方法があります。
それぞれの方法によって、対象となる人やかかる期間、費用などが異なります。
※医療保険適用外費用の額が上限となります。助成上限額に関しては自治体によって異なる場合がありますので、詳細はお住まいの自治体窓口にお尋ねください。
参考:日本がん・生殖医療学会 妊孕性温存:http://j-sfp.org/fertility/fertility.html
(2022年8月参照)
卵子(未受精卵)凍結保存
- 対象となるのは?
-
- 未婚の女性
- がん治療開始までに時間的な余裕がある女性
- 処置にかかる期間は?
-
2~6週間(卵巣刺激に約2週間)
- かかる費用は?
-
- 初期費用:20~40万円
- 維持費用:数万円/年
- 顕微授精(けんびじゅせい):約5万円
※費用は保険適用外、すべて自費診療となります。自治体によっては助成金制度がある地域があります。
- 採取の方法は?
-
がん治療を開始するにあたって 女性用
「小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」班(編)より
引用・一部改訂
- デメリットはあるの?
-
- 排卵誘発剤(はいらんゆうはつざい)の使用による卵巣過剰刺激症候群(らんそうかじょうしげきしょうこうぐん)(卵巣が腫れて腹水がたまる)
- 採卵に伴う痛みや出血、感染など
- どれくらい行われているの?
-
技術的に確立してきていて、実施例も増えています。
(参考情報)2018年に凍結卵子を用いた移植の総回数は136回で、妊娠率は27.9%、出産率は15.4%でした※。
(ただし、一般不妊患者さんを対象とした調査で、年齢は考慮されていません。)※:日本産科婦人科学会主導臨床研究:令和元年度倫理委員会 登録・調査小委員会報告
表9 凍結融解未受精卵を用いた治療成績[2018年](2020年10月)参考:日本がん・生殖医療学会 妊孕性温存:http://j-sfp.org/fertility/fertility.html
「厚生労働科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業 小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと
生殖医療ネットワーク構築に関する研究」班:がん治療を開始するにあたって<抗がん剤編>
将来出産を希望される女性患者さんへ:http://www.j-sfp.org/ped/index.html
(2022年8月参照)
がん治療後の妊娠に向けて
まずは、がんの状況や、体調や生殖機能、ホルモンバランスなどの身体の状況が戻っているかどうかを、
がん治療医に聞いてみましょう。
また、凍結保存の方法によって、妊娠に向けての準備が異なるので、生殖医療医に相談しましょう。
凍結保存した未受精卵を用いた妊娠を希望する場合は、体外受精を行います。
体外受精の方法には、通常の体外受精と顕微授精(けんびじゅせい)の2種類の方法があります。
受精が確認できたら数日間培養してできた胚を子宮内へ戻します。
卵子は胚に比べ、凍結をとかす際に影響を受けやすいというデメリットがあります。
体外受精
卵子が入っている培養液に精子浮遊液(ふゆうえき)を加えて受精するのを待ちます。
顕微授精(けんびじゅせい)
細いガラス針の先端に1個の精子を入れ、卵子の中に顕微鏡で確認しながら直接注入します。
胚(受精卵)凍結保存
- 対象となるのは?
-
- 配偶者がいる女性(事実婚含む)
- がん治療開始までに時間的な余裕がある女性
- 処置にかかる期間は?
-
2~6週間(卵巣刺激に約2週間)
- かかる費用は?
-
- 初期費用:30~50万円
- 維持費用:数万円/年
- 凍結融解胚移植(とうけつゆうかいはいいしょく):10~15万円
※費用は保険適用外、すべて自費診療となります。自治体によっては助成金制度がある地域があります。
- 採取の方法は?
-
がん治療を開始するにあたって 女性用
「小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」班(編) より
引用・一部改訂
- デメリットはあるの?
-
- 排卵誘発剤(はいらんゆうはつざい)の使用による卵巣過剰刺激症候群(らんそうかじょうしげきしょうこうぐん)(卵巣が腫れて腹水がたまる)
- 採卵に伴う痛みや出血、感染など
- どれくらい行われているの?
-
技術的に確立していて、実施例も多くあります。
(参考情報)2018年に凍結胚を用いた移植の総回数は199,914回で、妊娠率は34.7%、出産率は24.1%でした※。
(ただし、一般不妊患者さんを対象とした調査で、年齢は考慮されていません。)※:日本産科婦人科学会主導臨床研究:令和元年度倫理委員会 登録・調査小委員会報告
表8 凍結胚を用いた治療成績[2018年](2020年10月)参考:日本がん・生殖医療学会 妊孕性温存:http://j-sfp.org/fertility/fertility.html
「厚生労働科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業
小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」班:
がん治療を開始するにあたって<抗がん剤編>将来出産を希望される女性患者さんへ:
http://www.j-sfp.org/ped/index.html(2022年8月参照)
がん治療後の妊娠に向けて
まずは、がんの状況や、体調や生殖機能、ホルモンバランスなどの身体の状況が戻っているかどうかを、
がん治療医に聞いてみましょう。
また、凍結保存の方法によって、妊娠に向けての準備が異なるので、生殖医療医に相談しましょう。
凍結保存した胚を用いた妊娠を希望する場合は、凍結融解胚移植(とうけつゆうかいはいいしょく)を行います。
凍結融解胚移植(とうけつゆうかいはいいしょく)
凍結している胚をとかし、子宮内へ戻します。
卵巣組織凍結保存
- 対象となるのは?
-
- 初経(初潮)前の女性
- がん治療開始までに時間的な余裕がない女性(パートナーの有無は問わない)
- 処置にかかる期間は?
-
1週間(手術のために数日が必要)
- かかる費用は?
-
- 初期費用:60~80万円
- 維持費用:数万円/年
- 卵巣組織移植:60~80万円
※費用は保険適用外、すべて自費診療となります。自治体によっては助成金制度がある地域があります。
- 採取の方法は?
-
がん治療を開始するにあたって 女性用
「小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」班(編) より
引用・一部改訂
- デメリットはあるの?
-
- 手術に伴うリスク
- どれくらい行われているの?
-
研究段階のため、日本での実施例は多くありません。
(参考)海外では凍結保存した卵巣組織を用いて移植した後に37.7%が妊娠・出産したという報告があります※※。
日本での実施例も徐々に増えてきています。※※:Oktay K, et al. J Clin Oncol 2018; 36: 1994-2001
参考:日本がん・生殖医療学会 妊孕性温存:http://j-sfp.org/fertility/fertility.html
「厚生労働科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業
小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」班:
がん治療を開始するにあたって<抗がん剤編>将来出産を希望される女性患者さんへ:
http://www.j-sfp.org/ped/index.html
(2022年8月参照)
がん治療後の妊娠に向けて
まずは、がんの状況や、体調や生殖機能、ホルモンバランスなどの身体の状況が戻っているかどうかを、
がん治療医に聞いてみましょう。
また、凍結保存の方法によって、妊娠に向けての準備が異なるので、生殖医療医に相談しましょう。
凍結保存した卵巣組織を用いた妊娠を希望する場合は、卵巣組織をとかし、手術で体内へ戻します。
戻した卵巣の機能の回復が確認できたら、自然妊娠または体外受精を試みます。
卵子のもととなる卵胞は凍結時や体内に戻す際に消失し、数が減少するデメリットがあります。
まだ研究段階の方法で限られた施設でのみ行われています。
小児・AYA世代のがん患者等の妊よう性温存療法促進事業の参加施設
http://outcome2021.org/(2022年8月参照)
参考:日本がん・生殖医療学会:http://j-sfp.org/fertility/method.html(2022年8月参照)
精子凍結保存
- 対象となるのは?
-
- 精子の採取が可能な男性(パートナーの有無は問わない)
- 精通が開始されていないと実施できません。
- 射精障害のある方は他の方法で採取する場合もありますので主治医の先生に相談しましょう。
- 処置にかかる期間は?
-
- 射精の場合は短時間
- 何度かとっておくことも可能
- かかる費用は?
-
- 初期費用:約5万円
- 維持費用:2~6万円
- 凍結精子を使った顕微授精(けんびじゅせい):約40万円
※費用は保険適用外、すべて自費診療となります。自治体によっては助成金制度がある地域があります。
- 採取の方法は?
-
がん治療を開始するにあたって 男性用
「小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」班(編)より引用
- デメリットはあるの?
-
- ほとんどありません
- どれくらい行われているの?
-
技術的に確立していて、実施例も多くあります。
がん治療によって精子をつくる機能が障害され、無精子症が長く続いたとしても数年してから回復してくる場合もあります。いつ精子が回復するか、しないのかは完全には予想できません。
無精子症の場合、顕微鏡で見ながら精巣から精子を採取する手術を行う方法もあります。参考:日本がん・生殖医療学会 妊孕性温存:http://j-sfp.org/fertility/fertility.html
「厚生労働科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業
小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」班:
がん治療を開始するにあたって 将来出産を希望される男性患者さんへ:
http://www.j-sfp.org/ped/index.html
(2022年8月参照)
がん治療後の妊娠に向けて
まずは、がんの状況や、体調や生殖機能、ホルモンバランスなどの身体の状況が戻っているかどうかを、
がん治療医に聞いてみましょう。
また、凍結保存の方法によって、妊娠に向けての準備が異なるので、生殖医療医に相談しましょう。
凍結保存した精子を用いた妊娠を希望する場合は、体外受精を行います。
体外受精の方法には、通常の体外受精と顕微授精(けんびじゅせい)の2種類の方法があります。
受精が確認できたら数日間培養してできた胚をパートナーの子宮内へ戻します。
体外受精
卵子が入っている培養液に精子浮遊液(ふゆうえき)を加えて受精するのを待ちます。
顕微授精(けんびじゅせい)
細いガラス針の先端に1個の精子を入れ、卵子の中に顕微鏡で確認しながら直接注入します。