どんな影響があるの
-男性の場合
手術による影響
-手術の範囲によって『子どもの授かりやすさ』に違いが生じます
精巣がんなどで精巣を取り除く手術を行った場合、手術の範囲によって精子をつくる機能への影響が異なります。
両側の精巣を摘出した(取り除いた)場合
精巣は精子をつくる生殖器なので、精子をつくることができなくなります。
片側の精巣だけを摘出した(取り除いた)場合
残った精巣で精子をつくることができ、子どもを授かる可能性が残ります。
勃起や射精に関わる神経を傷つけた場合
前立腺がん、膀胱がん、大腸がんなどの手術の際に、性機能を司る自律神経が傷つくと、勃起障害や射精障害が起きることがあり、子どもを授かる力に影響します。
放射線照射による影響
-放射線の照射量が増えるほど精巣へのダメージは大きくなります
精巣に対する放射線の照射により、精子の数が減ったり(乏精子症)、精子がない状態(無精子症)になることがあります。放射線の量が少なければ、治療が終わってから数年後に再び精巣で精子をつくることができるようになることもありますが、放射線の量が多い場合は精子をつくるはたらきが回復しにくくなります。
薬物療法による影響
-使用されるお薬の種類によって影響が異なります
(1)化学療法(殺細胞性抗がん剤)による影響
化学療法(殺細胞性抗がん剤)とは、がん細胞を攻撃することでその増殖を妨げたり、破壊する働きのあるお薬を用いた治療法です。主な薬剤の種類として、代謝拮抗薬、白金製剤、アルキル化薬、抗生物質などがあります。お薬の種類によって、精子や精巣の機能に大きく影響するものもあれば、ほとんど影響しないものもあります。精巣がんに使われることの多い化学療法では、一時的に精子の数が減ったり、精子がない状態になったりすることがあります。また、同じお薬でも投与量や投与期間によって精巣が受けるダメージはさまざまで、精子をつくる機能が回復することもあれば、回復が難しいこともあります。さらに、精子の数が回復しても、精子の質が落ちることも懸念されます。
(2)分子標的療法による影響
分子標的薬とは、がん細胞の表面にあるたんぱく質や遺伝子などをターゲットとして、がん細胞を効率よく攻撃する薬剤です。分子標的薬が精巣の機能に及ぼす影響ははっきりしていません。
(3)内分泌療法による影響
内分泌療法はホルモン療法とも言い、ホルモンの分泌やはたらきを阻害し、ホルモンを利用して増殖するタイプのがんを攻撃する治療法です。前立腺がんに対して行う内分泌療法は、男性ホルモンを抑制するため、性欲低下とともに精子をつくる機能を低下させます。
(4)免疫療法による影響
免疫機能は、体の重要な防御システムですが、一方で過剰な免疫反応を抑える機能が備わっています。免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)は、この免疫を抑える機能を解除し、がんに対して免疫が攻撃できるようにする薬剤です。免疫療法が精巣の機能に及ぼす影響ははっきりしていません。
造血幹細胞移植による影響
造血幹細胞は骨髄の中で血球(赤血球、白血球、血小板)をつくりだすもとになっている細胞です。造血幹細胞移植は、まず大量の化学療法や全身への放射線治療を行い、その後に自分またはドナーから事前に採取した造血幹細胞を点滴で投与する治療法です。白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの血液がんに対して造血幹細胞移植を行う場合、最初に行われる大量の化学療法や全身への放射線治療によって精巣は回復できないほどの大きなダメージを受け、精子がない状態が長く続く可能性があります。