治療が落ち着いた後も気になる外見のこと ~よくあるお悩みQ&A~

このページを見てくださっているあなたは、いま何が気になっていますか?
がん治療を開始するとき、これから起こるかもしれない治療による外見の症状について、病院でいろいろと説明を受け、たくさん工夫をしながら乗り越えてきた方もいるでしょう。
それでも、治療が落ち着いた後の日常生活を過ごしていくなかで、治療中に気になったことがずっと続いたり、また新しく違う悩みが出てきたりするかもしれません。
このページでは、そんな「ちょっと気になる」「こんなときどうしたら・・・」を解消していくためのヒントやエールを、専門の看護師さんから教えて頂きました。

執筆:金沢医科大学病院 乳がん看護認定看護師 久野 真知子 先生

髪に関するお悩み

Q1. 治療で髪が抜ける前からウィッグを使い始めました。
どのタイミングで、どんな風にはずせばいいか迷っています。

A. ウィッグを外すタイミングは、自分で「もう大丈夫!」と納得できたとき。

脱毛が起こりやすいと言われている抗がん剤の治療が終わると、個人差はありますが、3か月程度で再発毛が始まります。また生え始めた髪は、くせ毛や柔らかい髪が生えてくることが多く、これまでの自分の髪質と変わってしまい、ウィッグを外したときの髪の長さや雰囲気で、周囲の人たちからどういう風に見られるか気になってしまうかもしれません。

私がこのご相談をされたときに、みなさんにお伝えしているのは、ウィッグを外すタイミングは自分が「これならウィッグがなくても大丈夫!」と納得できたときです。治療が終わったらすぐに外さなければいけないことはなく、ウィッグの髪型が気に入っているからそのまま使い続けることを選択される方もいます。ウィッグをかぶっているほうが大変なので早く外したいというときは、美容師と相談しカットのタイミングを計画される方もいます。また、ウィッグを外す勇気がでるまで使用を継続する方もいらっしゃるので、本当にみなさんそれぞれのタイミングです。あなたは、どのようにしてみたいですか。自分らしく、心地よく過ごせるのはどういう状態かを想像してみると良いかもしれません。

ウィッグを装着し始めたときと同様に、外すときも勇気が必要なものです。久しぶりに自分の髪をスタイリングして人と会うとき、周囲が変化を気にして声をかけてきたときなどには、「おしゃれ」「イメージチェンジ」などと笑顔で答えることができると、ほとんどの人はあなたの素敵な表情に注目するものです。

Q2. 髪が生えてきましたがチリチリです。
縮毛矯正やストレートパーマはしてもいいですか?

A. 「がん治療をしたからやめておきましょう」ということはありません。自分にとって最良の方法を考えてみましょう。

縮毛矯正やストレートパーマによる髪へのダメージや接触性皮膚炎のリスクは避けられません。これは、がん治療後だからというわけではなく、病気や治療の影響がない方にとってもあてはまる、一般的な留意点です。あなたが日常を過ごしていくなかで、生活のしやすさを重視し、縮毛矯正やストレートパーマをすることもひとつの手段です。

まずは、自分がこれからどのように過ごしていきたいのかを考えてみましょう。縮れ毛がおさまるまでウィッグを使い続ける、縮れ毛のまま生活することもひとつの選択肢になるでしょう。縮毛矯正やストレートパーマを行う際は、ある程度髪の毛が伸びた後に、施術で使う薬剤が頭皮に付着しないように、信頼のおける美容師に施術してもらうことをおすすめします。縮毛矯正をしても、一度でストレートの髪にならない方もいるため、その点を理解したうえで施術をしてもらってください。また、治療後再発毛し始めた頃は縮れ毛が生えてきやすいですが、時間の経過とともに多くの方は治療前のような髪質に戻ることが多いです。

Q3. 髪が生えてきましたが白髪が目立ちます。
カラーリング(髪染め)をしても良いですか?

A. 縮毛矯正やストレートパーマと同じように考えてみましょう。

カラーリングも、縮毛矯正やストレートパーマと同じように、病気や治療の影響がなくても髪や皮膚へのリスクがあります。これからの生活を考え、リスクはあっても目立つ白髪を染めて早くウィッグを外すのか、ウィッグを使い続けたり、この際白髪で過ごしてみたりなど、髪を染めること以外の自分らしいスタイルを考えてみるのもおすすめです。

Q4. 美容師さんへ伝えたほうが良いこと、相談したほうが良いことはありますか?

A. ご自身の病気や治療のことはプライバシーなので、必ずしも伝える必要はありません。治療前と同じようになりたい髪型や髪の扱い方の相談で十分です。もし体調や施術環境などで気になることがあれば伝えておくと配慮してもらえることがあるかもしれません。

治療を受ける前、美容師さんにはどのように自分の希望を伝えていましたか?「こんな髪型にしてほしい」「カラーはこういう色にしたい」「この部分を扱いやすい髪型で」と伝えていたのではないでしょうか。がんになったこと、治療を受けていたことなどは、言いたくないのであれば伝えなくても良いのです。美容師さんと相談しながらイメージチェンジや気分転換を楽しんでください。

美容院の方へ「治療中や治療後のお客さんから相談されたら」

私たちの目の前にいる方はいろいろな役割をもっています。美容師のみなさんのところへお客さんとして行かれた方たちは、「あともう少しこうだったらもっと自信が持てる」「こんな風になれば過ごしやすい」と思い、みなさんの美容師としての知識や技術に期待をしています。がん罹患者だからと言って特別な商品や施術が必要なわけではなく、注意することは一般の方と同様です。いつも通りの接客とさりげない気配り(体調やプライバシーなど)で十分だと思います。その人がその人らしく、笑顔で過ごせるよう共にサポートをお願いします。

爪や指先の色の変化

Q5. 爪の変形や変色、皮膚の色素沈着があります。
仕事のとき人前に手を出すので目立たなくする方法はありますか?

A. 気になるときは化粧品などを使うこともできます。気になる場面をイメージして対応しましょう。

抗がん剤の治療が終わった後、指先の色素沈着は数週間~2、3か月程度で改善することが多いです。爪障害については、爪母細胞に強い障害がある場合で、手の爪は半年、足の爪は1年で元通りに生え変わると言われています。それまでの期間、変色や変形が気になるようであれば、治療期間中と同じように、皮膚にはボディ用ファンデーションやBBクリームなど、爪にはマニキュアの使用でカモフラージュすることができます。手の皮膚の保湿ケア、爪の保湿やマニキュアを塗ってみる(透明のマニキュアでも違います)だけでも手の印象は変わって見えます。

ただ、お仕事によってはそのような化粧品でカモフラージュすることが難しいこともあるかもしれません。

そこで、指先が気になる場面については、日常生活のなかの、どういうシチュエーションで気になり、実際にどの程度の対策が必要なのか、イメージしてみることをおすすめしています。いま指先のことが気になってこのページを見てくださったあなた自身が、これまで相手の指先をどの程度気にしていたのか思い出してみるといいかもしれません。きれいなネイルをしている方は印象に残っているかもしれませんが、大半は相手の表情やしぐさをみているのではないでしょうか。

リンパ浮腫の対策

Q6. これ以上リンパ浮腫がひどくならないように、重いものを持ったり、
使いすぎたりしない方がいいですか。

A. 最近では、筋力トレーニングや有酸素運動も推奨されています。心配な方は、一度病院で相談してみましょう。

リンパ浮腫の悪化の要因は、主に、肥満と感染が挙げられます。これまでリンパ浮腫が悪化する可能性があるため「避けるべき」とされていた、患側(リンパ節をとった側の腕)の採血や血圧測定、抗がん剤以外の点滴については、リンパ浮腫の発症の要因となる根拠がないとされています。患側で重いものを持ったり、使いすぎたりすることで、リンパ浮腫が悪化するというイメージは根強くありますが、近年では安静にしているよりも筋力トレーニングや有酸素運動がリンパ浮腫の治療として推奨されています。ひどく疲れてしまうまで使いすぎることは好ましくありませんが、例えばこのような運動(エクササイズ)を取り入れてみるのも良いと思います。

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また、感染については、虫刺されなどのかきむしり傷が原因になってしまうこともあります。氷で冷やす、市販の虫刺され用の薬を使う、といった方法で痒みを抑えることでかきむしりを防ぐことができます。

みなさんはどのようなケアをしていますか。一度、主治医や看護師に確認してみると良いのではないでしょうか。

治療中に比べると通院する頻度が減っていても、何か気になることがあるときはいつでも病院へ相談することができます。もし、相談したいけど時間が作れない、次の通院までは自分で乗り切ってみよう、といった場合には、こちらのページが参考になると嬉しいです。

ぜひ、あなたが「自分らしく」過ごせるような方法を見つけてくださいね。

※患者さんへの情報提供ならびに本コンテンツの回答については、以下の出典を参考としています。

  • 野澤桂子, 藤間勝子(編)『臨床で活かす がん患者さんのアピアランスケア』南山堂, 2024年
  • 日本がんサポーティブケア学会(編)『がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版』金原出版, 2021年

(2025年10月公開)