いち早く在宅勤務制度を導入し、がんになっても力を発揮できる環境整備を推進 ~日本オラクル株式会社~

日本オラクル株式会社 人事本部 制度企画・運用グループ シニアマネジャー 二見直樹さん

がんを患ったときの大きな悩みのひとつが、仕事です。「社内の誰に相談すればよいのかわからない」「上司や同僚には話すべきか?」「そもそも治療を続けながら働くことができるのか?」など、悩みは尽きません。このように悩みを抱える社員に寄り添い、さまざまな取り組みを行う企業が近年、増えてきました。
そこで今回は、「がんと就労」への取り組みが認められ、「がんアライ宣言・アワード」でシルバー受賞(※1)、「健康経営優良法人2019」(※2)にも選出されている日本オラクル株式会社を取材。がんを患いながら働く社員が利用できるサポート制度にはどのようなものがあるのか、人事本部 制度企画・運用グループ シニアマネジャーの二見直樹さんにお話を伺いました。(2019年3月取材/2024年4月改訂)

1「がんアライ宣言・アワード」……がん患者が治療をしながらいきいきと働ける職場や社会を目指して創設されたアワード。
https://www.gan-ally-bu.com/report/1029別ウィンドウで開きます(2019年4月24日閲覧)

2「健康経営優良法人2019」……地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する、経済産業省の制度。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html別ウィンドウで開きます(2019年4月24日閲覧)

日本オラクル株式会社について

米国企業オラクルコーポレーションを母体とし、1985年に設立。情報システム構築のためのソフトウェア製品、ハードウェア製品、ソリューション、コンサルティング、サポートサービスなどの事業を展開。社員数2,497名(2018年5月31日時点)。

勤務制度や福利厚生制度、社内のフォロー体制まで、きめ細やかな支援を用意

早速ですが、社員の方ががんになった場合、貴社ではどのようなサポートを用意しているのでしょうか?

日本オラクル・二見さん:まずは、当社の勤務制度からご説明します。当社は外資系企業ですが、我々もグローバルのメンバーの一員として各国のメンバーとともに働くために、場所や時間に依存せず、より高い成果を発揮することを目的として、裁量労働や在宅勤務制度をはじめフレキシブルな働き方を運用しています。そのため、がんだけでなく、社員の体調に配慮して、出退勤時間に柔軟性を持たせたり、業務遂行が可能なケースにおいては上司承認によってフル在宅勤務も含むリモートワークを認めています。そのほかにも、所定労働時間を短くする「時短勤務」や残業時間がなく所定労働時間で勤務する「時間限定勤務」といった制度もあります。

支援体制以前に、フレキシブルな働き方ができる環境の素地があるのですね。

日本オラクル・二見さん:そうですね。さらに休暇制度では、年次有給だけでなく傷病休暇(シックリーブ制度)もあります。病気や怪我をしたときには、年次有給休暇以外にも傷病休暇を利用することが可能です。傷病休暇は、年間5日の有給休暇として付与されます。
さらに、福利厚生制度でも、選択制の福利厚生(カフェテリアプラン)で病気に対するケアを行うことができます。会社が費用負担する定期健康診断に脳ドックやがん検診等のオプションをつけた場合にも、カフェテリアプランのポイントを使用して費用負担を軽減できますし、EAP(Employee Assistance Program:社員支援プログラム)として、社員とその家族は無料で社外のカウンセリングを利用することができます。
また、総合福祉団体定期保険に加入していますので、もしも社員が亡くなったり高度障害になったりした場合には、ご本人もしくはご家族に保険金を支給する制度を用意しております。加えて、長期給与補償保険によって、疾病のために長期休業が発生して、欠勤や休職することで所得が減ったときにも、補償を得られる保険制度も導入しています。

休暇制度・福利厚生面からも、「もしもの場合」も安心できる環境を用意しているのですね。社員の方ががんなどの病気を告知された場合に相談できる窓口なども設置されているのでしょうか?

日本オラクル・二見さん:はい。それぞれ所属部門ごとに担当人事が配置されており、そこが相談窓口となって社員をサポートします。さらに、産業保健スタッフとして社内に産業医が3名、保健師3名が在籍しているので、がんと診断され治療のために休職した場合などに、復職に向けた相談にも対応しています。社員を支える取り組みとして、休暇制度や各種サポート制度に目がいきがちですが、当社の特徴としては、本人や家族が相談できる体制やもしもの場合の経済面での支えも含めた総合的な支援策を導入しております。

幅広いサポート体制を実現していますね。

日本オラクル・二見さん:疾病に関しては、がんだけでなく、例えば人工透析などで通院しながら働く社員もいますので、それぞれの事情に応じた柔軟なサポート体制を目指しています。働きながら治療するのか、一度休んで療養に専念するのかは人それぞれですが、個別のケースに適した制度で対応しています。

貴社では、在宅勤務制度を2003年から導入されていると伺いました。働き方改革関連法案の施行よりもおよそ15年も前ですね。

日本オラクル・二見さん:コロナ禍以降、各企業のマインドも変わってきてはいますが、やはり働くイコール出社という価値観がまだまだ存在しています。我々はかねてよりグローバルのチームとリモート会議をすることは日常的であり、時差や距離などを超えて協働するには、勤務場所は関係ありません。例えば、アメリカと日本で、それぞれの場所でそれぞれの時間帯で協働しているのだから、これをオフィスと自宅に置き換えたとしても、同じように業務遂行できるという考えは当然と言えるでしょう。
こうした環境で働けば、必然的に業績は在社時間の長短ではなく、アウトプットで評価されます。すると、勤務時間や勤務場所の制約は減り、より柔軟な働き方を推進できる環境が広がっていくと考えます。

その自由な働き方があるから、通院しながらでも仕事に打ち込めるのですね。

日本オラクル・二見さん:当社の所定労働時間は9時〜17時、休憩1時間、1日の実労働時間は7時間です。しかし、その時刻に出社しなくても、その日に遂行すべき業務が完了されれば業績は達成できますし、週単位、月単位で考えれば、さらに勤務時間の柔軟性の幅は広がります。例えば、出張や外出で常時オフィスにいない場合もあるわけですから、通院しながら業務に就くことも可能だというのも、当たり前といえば当たり前のことかもしれません。
もちろん、健康状態によっては業務に就かず、療養に専念する必要があるということは言うまでもありません。

がんと向き合う会社であるためには

実際に社員が、がんになった場合、どのような働き方ができるのでしょうか。

日本オラクル・二見さん:大きく2つあります。――「休暇を取得して治療に専念する」もしくは、「働きながら治療する」です。治療に専念する場合でも、1か月スパンで産業医が状況を確認し、会社との繋がりを保てるようにしています。もっとも、入院している場合は、本人の負担にならないように確認頻度を控えるなど、ケースバイケースで対応しています。
一方、働きながら治療する場合でも、化学療法や放射線治療など身体への負担が大きい場合は数日間休んでから出社したり、在宅勤務に切り替えたりすることもあります。自宅近くの病院に通院している方のほうが多いようですから、通院後に通勤する手間を考えると、在宅勤務は効率の良い働き方だといえます。本人には、その時その時で対応可能な仕事をお任せしながら、仕事を続けていけるようにサポートしています。

現在、社員の中にがん患者の方はいらっしゃいますか?

日本オラクル・二見さん:はい、我々が把握している範囲で数名の社員がいます。現在休職中の社員も職場復帰している社員もいます。また、会社に正式な申告はございませんが、がんと診断されてからも働いている方がいるようです。そうした方々はご体調と日常業務との両立に支障がないように、裁量労働や在宅勤務を活用しながら継続的に勤務しています。
もちろん就労に支障があるようなケースにおいては、療養に専念するよう指導しています。

実際にそうした社員の方と人事担当者が会話する場面はあるのでしょうか。

日本オラクル・二見さん:部門担当人事が当人や上司と話すことはありますし、状況に応じて産業医に繋ぐこともあります。やはり、仕事との両立で悩んでしまうケースが多いので、必要に応じて今までお話ししたような、当社にあるサポート体制の説明をします。もちろん、社員の情報は関係者だけで共有し、円滑に業務を進められるように最大限協力していきます。

がんになった際の悩みの一つに、「会社にどのように報告するかどうか」というものがあると思います。産業医への相談がきっかけで会社に報告されるケースなどもあるのでしょうか。

日本オラクル・二見さん:はい、ありますね。がんに限らず、産業医への相談件数は年々増えています。ただし、これは必ずしも社員の有病率が増加しているというわけではなく、産業医への相談が身近になっており、社員との距離が近くなっていることに起因しています。

各種保険制度がありますが、そこで助かった、役立ったと言われた事例などがあればご紹介ください。

日本オラクル・二見さん:社員が亡くなられた場合の保険金は、ご遺族にとっては継続的な支えになっているようです。一昔前では、生命保険の外交員の方が新卒入社を勧誘するような場面も多く見られましたが、現在ではそういった機会も少なく、社会人でも生命保険に加入に関しては人それぞれのようです。もし個人で生命保険に入っていない場合には、会社が加入している保険があるかどうかで、社員、ご遺族の経済的負担は大きく変わってきます。

社員が長く活躍できるように、環境を整える

貴社では多様なサポート体制を用意されていますが、課題に感じていることなどはあるのでしょうか。

日本オラクル・二見さん:がんになったとしても、本人の意思があれば健康状態と担当業務次第では十分に就労継続は可能です。しかし、前提として当社の評価制度は成果主義ですので、アウトプットが下がると評価も下がってしまいますし、その点は病気の有無に関わらず平等に判断されます。就労の継続を選択した場合は、業務での成果が求められますので、治療と就労の両立を希望する社員の方がパフォーマンスを発揮するためにどのようなサポート体制が必要かは、継続して検討していかなければなりません。

今後の取り組みについて、方向性などあればお聞かせください。

日本オラクル・二見さん:日本では少子高齢化への対応として、定年後の継続雇用や定年となる年齢の引き上げなども実施されています。一方、60歳以上になると、がんなどの有病率も高まっていきます。そういった年齢に達した社員へ、予防や早期発見、早期治療を促すために定期健康診断の受診勧奨や、産業医のカウンセリングをより身近なものにして、社員が自発的に健康について相談しやすい環境を作っていく必要性を感じています。現行の制度に加え、そうした取り組みを推進していくことでサポート体制の拡充を図りたいと考えています。

(取材・執筆 眞田幸剛)
2019年6月公開 / 2024年4月改訂