がん患者さんの医療保険 よくある相談にお答えします②

医療機関でがん治療中の方やその家族の方向けに開催しているお金の相談会にも、民間保険についての相談は数多く寄せられます。
今回は、医療保険の入院時保障と、生命保険でお金を工面する方法について、よくある相談にがんライフアドバイザー®が答えます。

回答:日数制限や回数制限などの保障内容や、医療保険独自の入院ルールを把握し、これからのお金の見通しを正しく立てましょう

病気やケガによる万一の入院に備え、医療保険に加入していた方もいらっしゃることでしょう。
契約内容によりますが、がんの疑いでの検査入院や、がん治療のための入院、緩和ケア病棟での入院など、がんライフを送る中で医療保険の入院保障の対象となる場面はいくつかあり、医療保険から支払われる入院給付金は、がんライフのお金の面を支える大切な収入となり得ます。

しかし、がん保険とは異なり、医療保険は、一般的に入院時の保障を無制限としておらず、支払われる入院給付金には日数制限、入院一時金には回数制限が設定されています。また、医療保険独自のルールがあり、それに基づいて入院給付金が支払われるため、入退院を繰り返すときには注意が必要です。

① 自身の医療保険の保障内容を確認

まず、加入している医療保険の保障内容がわかる書類を見てみましょう。
生命保険会社が取り扱っている医療保険の入院時の保障は、大きく分けると2つのタイプがあります。1つは、入院した日数に応じて、契約時に設定した日額給付金を受け取れるタイプ(以下、入院給付金)。もう1つは、入院日数は関係なく、入院すると一時金が受け取れるタイプ(以下、入院一時金)です。どちらのタイプか確認してみましょう。

医療保険の入院時保障のタイプ
入院給付金 入院した日数に応じて、契約時に設定した日額給付金を受け取れる
入院一時金 入院日数は関係なく、入院すると一時金が受け取れる

入院給付金の保障内容にある「1入院○○日」とか「○○日型」という表記は、保険会社のルールで考える1回の入院(1入院)で入院給付金が支払われるのは何日分かを示しています。「通算△△日」は、入院給付金が支払われる累積の日数は何日分か、の表記になります。入院一時金であれば「通算××回」と、契約中に1入院につき、一時金が支払われる限度回数が記載されています。
中には、がんを含む三大疾病、七大疾病による入院に限り「無制限」にしている医療保険もあります。この場合は、がん治療で何日入院しても、何度入院しても、日数や回数に制限なく、契約している金額が支払われます。
保険商品によって日数や回数が異なるので、複数の医療保険に加入している方は、1つ1つ確認が必要です。

最近の入院期間は短くなっていると聞くから、この制限は気にする必要はないのでは?と思われるかもしれません。しかし、医療保険独自のルールによって入院日数をカウントするために、制限日数をオーバーしてしまって、途中から給付金が出なくなる可能性もあることを知っておいてほしいと思います。

② 医療保険の入院日数・入院回数のルールを確認

医療保険には、入院の理由が同じ病気で、入退院を繰り返した場合、退院後、次の入院までに「一定の日数」が空いていないと、前回の入院日数を引き継いで日数をカウントされる、言い換えれば、継続した1回の入院(1入院)とみなされるというルールがあります※1。この「一定の日数」が、180日となっている契約がこれまでの主流である※2ことから、「180日ルール」と呼ばれたりもするのですが、耳にされたことはありますか?

※1 一部の保険では別の理由での入院でもルールが適用されます
※2 一定の日数が60日、90日の契約になっている商品もあります

図1のケースで180日ルールを考えてみましょう。胃がんの疑いがあり、その検査のために1回目の入院。胃がんと診断され、胃を切除するために2回目の入院。内服薬での治療中に体調悪化、検査の結果、肝転移が見つかり、病状回復と抗がん剤治療のために3回目の入院をしています。

図1:がん治療経過と医療保険の180日ルールの例

同じ病気での入院かどうかの判断は、それぞれの入院が医学上重要な関係があるのか、主治医がどう診断しているかにより、保険会社が審査します。
図1のケースの3回目の入院は、肝臓にある腫瘍に対する治療目的ですが、元が胃がんで肝臓への転移なので、この場合、入院は3回とも胃がんが理由での入院となります。

次に180日ルールが適用されるかどうかですが、1回目の退院の翌日から2回目の入院までの期間は20日、2回目の退院の翌日から3回目の入院までの期間は80日となっています。どちらも180日以内なので、医療保険では3回の入院を合わせて1入院とみなします。
よって1回目の3日間、2回目の14日間と通算して、3回目の入院の初日は、入院日数18日目とカウントされます。

もし、加入している医療保険が1入院につき30日分しか入院給付金が支払われないものであれば、3回目の入院時に給付金はいつまで受け取れるでしょうか。既に17日分の給付金が支払われているので、残り13日分しか支払われません。つまり、3回目の入院の14日目以降の入院に関して、入院給付金は支払い対象外となります。

再入院で、入院一時金が出なかったAさんのケース

1回の入院につき一時金が支払われる医療保険に加入をしていました。手術後に退院をし、初回の抗がん剤治療時に再度入院をしたため、2回分の入院一時金を請求したところ、1回目の退院からまだ1か月も経っていない時点での入院だったため、180日ルールにより1入院とみなされ、1回分の入院一時金しか支払われませんでした。

繰り返しの入院で、入院給付金が出続けたBさんのケース

治療スケジュールに合わせ、6日間入院して1日だけ自宅に帰る入退院を繰り返していました。加入していた医療保険の入院給付金は入院5日目から出る契約だったので、毎回の入院ごとに2日分(5日目、6日目)だけしか出ないと思い込んでいらっしゃいました。しかし、180日ルールにより繰り返す入退院は全て1入院としてみなされるために、1回目の入院の最初の4日間以外、支払限度日数まで入院給付金が支払われました。

保障内容を確認しながら、この180日ルールをお伝えすると、知らなかったとおっしゃる方は少なくありません。医療保険の入院給付金による収入をアテにしていたのにとガッカリされるAさんのような方もいらっしゃれば、思っていたより入院給付金が受け取れると喜ばれるBさんのような方もいらっしゃり、悲喜こもごも。
これからのお金の見通しを正しく立てるために、保障内容やルールを知っておくことは大切です。

回答:生命保険の解約ではなく、契約者貸付制度やリビング・ニーズの利用で、高金利のローンはすぐ完済を

日々の生活のため、受診時の医療費の支払いのため、とにかく手元に現金が必要だけれど、預貯金も底を尽きてしまって引き出せるお金がない。次の入金日は、まだあと少し先。どうしよう……。

実は、こんな状況に陥ってしまった方が、相談にいらっしゃったときに口を揃えておっしゃるのはカードローンのお話です。カードローンは、担保も保証人も必要とせず、銀行やコンビニなどに設置されているATMで借りられることから、今だけ、ちょっとだけ、という気持ちで借入をしやすいのはわかります。
しかし、カードローンを利用することを、私はおすすめしません。なぜなら、緊急時の一度だけのはずが、簡単にいつでも少額を借りることができるために、もう少しだけ、もう少しだけと借入を繰り返してしまうケースが多く、また金利の高いカードローンは利子がたくさんつき、返済の見込みが立たないほど借金額が膨らんでしまった方を何人も見てきたからです。

そこで、生命保険でのお金の工面は、解約して解約返戻金を受け取るのではなく、活用して現金を得ることも検討してみましょう。得たお金で、少しでも早くカードローンの借金を完済することをおすすめします。

①「契約者貸付制度」の利用

解約返戻金のある積立型の保険、例えば終身保険、養老保険、学資保険などに加入しているならば、その解約返戻金の7~8割の一定範囲内で、保険会社からお金を貸し付けてもらう「契約者貸付制度」を利用することができます。自分が積み立ててきた解約返戻金の一部から貸し付けを受けるため、審査も保証人も不要で、手続きは比較的スムーズです。
利子はその保険契約の利率によりますが、カードローンのような高金利ではありません。つまり、低い金利で貸し付けを受け、高い金利のローンを返済することで、返済額を減らすことができます。

契約者貸付制度には、明確な返済期限や決められた返済スケジュールはないので、自分なりの返済計画を立てることができます。もちろん早い段階で全額返済することが望ましいのですが、就労による収入が減っていたり、医療費を支払っている中で借金を返済していくことは、厳しい時期もあるでしょう。
万一、返済が残ったまま亡くなった場合には、貸付+利子の金額を差し引いた死亡保険金が、遺族に支払われることになります。つまり、契約者貸付制度で借りたお金は、死亡保険金から返すという形です。そこで、利子を含めていくらまでなら死亡保険金が減額になっても困らないのかを、家族間で話し合ってから、契約者貸付制度を利用することをおすすめします。

そしてなにより、契約者貸付制度を利用したからといって、保険が解約になることはなく、保障は変わらず継続されます。新たな保険に加入しづらく、これまで加入してきたものを守っていきたいがん治療中の方にとって、ここは大切なポイントではないでしょうか。

契約者貸付制度により保険料の支払いを継続できたCさんのケース

入院でのがん治療が決まり、一時的に自営しているお店を休業せざるを得なくなり、解約返戻金をその期間の生活費に充てようと生命保険の解約を考えていました。しかし、話を伺うと、子供たちに少しでも遺したいと思って加入した大切な保険とのこと。契約者貸付制度で貸し付けを受け、そのお金で毎月の保険料を支払い、保険契約を継続しました。

②「リビング・ニーズ」を利用しての死亡保険金の前払い

「リビング・ニーズ」とは、被保険者が余命6か月以内と診断されたとき、生存中に死亡保険金の全部もしくは一部を前払いで受け取れるしくみで、ほとんどの死亡保障には無料で付加されています。保障内容がわかる書類をよく見ると、「リビング・ニーズ特約付」と記載があるのではないでしょうか。保険料の負担がないだけに、リビング・ニーズが付いていることに気が付いていなかった方もいらっしゃるかもしれません。
このリビング・ニーズの利用に必ず必要になるのが、余命6か月以内という主治医の診断です。リビング・ニーズが付いていても、利用できる時期は限られています。
また、治療中に患者さんに対し、余命なんて不確実なことは言えないとおっしゃる医師もいらっしゃるでしょう。そうおっしゃるのも当然のことと理解したうえで、お金がないと借金が増える一方で、生活も治療もできない現実、お金に困らないように加入してきた生命保険の活用によってお金の問題が解決できることを、医師に伝えてみてはいかがでしょうか。

主治医が2人いたDさんのケース

病状が進行していることを自覚し、リビング・ニーズを利用しようと、がん診断当初から通院している病院の主治医に診断書の作成を依頼したところ、明確な余命はわからないので書けないと断られたと落胆していらっしゃいました。しかし、訪問診療に来てくれている在宅医療の主治医に尋ねたところ、がんの転移や広がりから余命6か月以内だという話があり、スムーズに診断書を作成してもらうことができました。

リビング・ニーズを利用すれば、死亡保険金額の範囲内で3,000万円を上限に、死亡保険金を生前に自分で受け取ることができます。ローンの返済や医療費、生活費の支払いには困らないどころか、命を延ばすためだけにしか使えなかったお金が、何か楽しみのために使えるようになる余裕が持てるかもしれません。
死亡保険金の受取人になっている家族と、お金だけではなく、残された時間を共にどう過ごしたいかを話し合ってみることができたら、リビング・ニーズの利用はより価値のあるものになるのではないでしょうか。

※生命保険、医療保険などの保障内容は、商品や契約内容、契約時期によって異なります。証券番号がわかる書類を手元に置きながら、契約者ご本人が各保険会社に問い合わせをし、確認してみることをおすすめします。

(2022年12月公開)

<執筆者> 川崎由華

一般社団法人がんライフアドバイザー協会 代表理事
大阪医科薬科大学大学院 医学研究科 在籍
社会福祉士、CFP®
1級FP技能士
住宅ローンアドバイザー
両立支援コーディネーター

医師の家系で生まれ育ち、がん治療関連薬を扱う製薬企業での勤務、両親のがんの罹患を経験。がん診療連携拠点病院で相談員を務める中、がん患者とその家族のお金や仕事の相談を受ける医療・介護者づくりの法人を設立。相談実績を医療関連学会での発表を重ねる他、お金や仕事の問題といった社会的苦痛の緩和も治療の一貫として考えていく重要性を、講演や雑誌、ラジオなどメディアを通じて全国の医療従事者や市民に向けて伝えている。