がん患者さんの保険 よくある相談にお答えします
医療機関でがん治療中の方やその家族の方向けに開催しているお金の相談会にも、保険についての相談は数多く寄せられます。
今回は、よくある3つの相談にがんライフアドバイザー®が答えます。
回答:がん治療の内容や家計状況を見ながら、自分で請求のタイミングを決めてしまいましょう
入院して手術でがんを切除した後、抗がん剤治療で2週間に1度の通院の予定があるとか、抗がん剤治療のために3日間の入院が3週間に1度の頻度であるといったように、がんの治療は、入退院を繰り返したり、定期的な通院が何か月、何年と続くことがあります。加入している保険から入院給付金や通院給付金が受け取れる場合、治療が継続している中で、どのタイミングで給付金の請求をしたらいいのか、悩んでしまうこともあるでしょう。
相談に来られる患者さんが、口をそろえておっしゃるのは、主治医に診断書を作成してもらうのにお金と時間がかかるから困る、ということ。
診断書の種類によっても、医療機関によっても、料金は異なりますが、診断書作成費は1通につき5,000円前後ではないでしょうか。もちろん保険適用外ですので、全額自己負担になります。こまめに請求すると、その分だけ診断書作成料が嵩んでいくことが、患者さんを悩ませています。
また、診断書作成の申込みをすると、作成には2~3週間ほど日数がかかるとしている医療機関が一般的です。待たされる日数がもどかしく思ったり、通院日に受け取れなかったりする方は少なくなく、自分が思うタイミングで給付金の請求ができないことに繋がっていると感じます。
がん診断時に給付金が出るCさんのケース
がんという診断があれば給付金が受け取れるがん保険に入っていたCさんは、乳がんの診断直後で治療開始前に、とりあえずがん診断給付金の100万円だけ受け取ることにしました。これからの治療や生活の資金を手元に置くことで、お金の不安は拭え、治療に前向きになれたとおっしゃっていました。その後、入院給付金や通院給付金の請求を急ぐ必要はありませんでしたが、いつでも請求できるようにと、保険会社から請求用の書類を複数枚、取り寄せておきました。
抗がん剤治療ごとに給付金が出るDさんのケース
Dさんは、抗がん剤治療をした月ごとに10万円が支払われる保険に加入していました。副作用による倦怠感がひどく、休職せざるを得ず、収入は給料の3分の2の額の傷病手当金のみ。預貯金を切り崩さないと生活費が足りませんでした。そこで、月初めの抗がん剤治療日に診断書を医療機関に提出すると決め、保険会社からの給付金を同じ頃に受け取れるように、毎月のルーティンにすることにしました。
せっかく受け取れる給付金があるのに、請求ができずに受け取れていないために、生活を切り詰めなければお金が回らないとか、他からお金を借りなければ支払いができなくなることは、本末転倒です。例えば2ヶ月分ずつといった具合に期間で区切って請求するのも一案、治療法や抗がん剤の種類が変わるごと請求するのも一案、退院ごとに請求するのも一案です。継続するがん治療の中で、家計状況を見ながら、自分の請求のタイミングを決めてしまいましょう。ただし、請求期限は、給付金を請求できるようになった日から3年*ですので、ご注意ください。
急ぎの場合には、医師の目に留まるよう、必要事項や期限の希望を書いたメモ書きを付けておく工夫をしたり、診断書提出前の診察時に一言事情を伝えてみてはどうでしょうか。
また、保険金請求の際に、医師の診断書が不要になるケースもあります。保険会社に確認してみましょう。
申請書類をあらかじめ取り寄せておく |
一定期間ごと、治療変更の際など、請求するタイミングを決めておく |
給付金請求期限は3年※なので注意 |
請求時の診断書の要不要を保険会社に確認する |
請求書類の目立つところに必要事項や期限をメモする |
診断書発行にかかる期間を確認しておく |
保険法第95条(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420AC0000000056)で定められています。ただし、3年が経過した後でも給付金を受け取れる場合もありますので、保険会社にご相談ください。
回答:保険料が払えないから解約、ではなく、保険会社に保険の見直しを相談してみましょう
がんになったときもお金の心配をしないですむように、必要となる費用をあらかじめ備えるために保険に加入していたはずなのに、保障の対象にならず、肝心なときに給付金が出ないケースも耳にします。なるべく支出を抑えたい状況で、給付金が出ない保障のための保険料は無駄な支出だ、解約してしまいたい、と思ってしまう心情も理解できます。
毎月の固定費を少しでも減らし、治療費の捻出はもとより、治療以外にがんライフを少しでも心豊かなものにできるためにお金を使えるよう、私もアドバイスをしています。民間保険の保険料も大きな固定費の1つ。しかし、保険料分だけ支出が減らせるから、保険を解約したらいいということでは決してありません。
病状や副作用の出方に応じて治療を選択していく中で、今の治療には給付金が出ないからといって、今後も役に立たない保障だとは限りません。
抗がん剤治療中のEさんのケース
術後の抗がん剤治療が始まったEさん。主治医から、今後は通院での抗がん剤治療なので入院する治療の予定はないと言われました。加入している保険からは、入院すると給付金が1日につき5,000円ずつ受け取れるのに、通院では1円も出ず、自分が交わした契約とはいえ、そのときはお金に困っているときに助けてくれない保険そのものに嫌悪感を抱いてしまった、とおっしゃっておられました。しかしその後、病状が進み、最期の過ごし方を口にされるようになりました。医療機関内の緩和ケア病棟に入ることを希望されたため、入院でも保険から入院給付金が出るとお伝えしたところ、最期まで家族にお金の負担をかけることはしたくなかったから、加入し続けていて良かったと安堵していらっしゃいました。
これから受ける可能性のある治療を医療スタッフに聞きながら、再度自身が持っている保障を確認してみることをおすすめします。
解約返戻金のある終身保険や養老保険であれば「保険料が支払えないけど、保障の範囲を小さくしていいから保険契約は続けたい」という希望に応え、解約しなくても支払う保険料が一切不要になる見直し方法が2つあります。
- 現在契約している保険金額は変えずに、保障の期間を短くするという見直し。
これは延長保険への変更で、例えば、現在の契約は終身保障になっているけれど、保障の期間は一定期間で良いと考える場合には有効な見直しです。 - 現在契約している保障の期間は変えずに、保険金額を少なくするという見直し。
これは払済保険への変更で、例えば、保障の期間は終身で契約しておきたいけれど、保険金額は減らしても構わないという場合に、有効な見直しです。
延長保険の保障の期間も、払済保険の保険金額も、契約を見直すときの解約返戻金などの積立金をもとに設定されます。つまり積立金のない掛け捨ての保険に、この見直し方法はできません。また延長保険や払済保険へ変更すると、特約は全て消滅してしまいます。入院特約や通院特約など、がん治療中に給付金を受け取れる特約を付けていた場合には、給付金による収入が無くなることも踏まえて検討する必要があります。
また、保障に付いている不要な特約を外すと、外した特約の分だけ支払う保険料を下げることができます。加入している保険の内容を改めて確認してみると、主契約は少額なのに、そこに数多くの特約が付いていることで保険料が高くなっていた、というケースもあります。特約1つ1つの内容を見て、要不要を検討してみてください。
保険料を下げるもう1つの手立てとしては、契約している保障額を下げることも一案です。例えば死亡時に1,000万円を受け取れる契約を500万円に下げることができれば、その分保険料も下がります。ただ、遺される家族がお金に困ってしまうようではいけません。しっかり家族内で話し合って判断されることが大切です。
保険料が支払えない=解約、ではなく、保険を見直して上手く活用できないか、加入している保険会社に相談してみてください。
延長保険にする (保険金額は変えず保障期間を短くする・特約は消滅する) |
保険料の支払いを不要にできる |
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払済保険にする (保障期間は変えず保険金額を減らす・特約は消滅する) |
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特約を減らす | 保険料の支払いを減らすことができる |
保障額を減らす |
(2023年4月更新)