がん経験者でも加入できる保険とは?

 がん経験者から「がんになっても加入できる保険はありませんか?」という質問をよく受けることがあります。
 「まだ若いので、保険にまったく加入していなかった」「すでに保険には加入しているが、保障が小さいので心配だ」「古いタイプの保険で今のがん医療に対応していない」など、加入を希望される理由はさまざまです。
 最近では、がんに限らず、既往症や持病をお持ちの方でも加入できる保険商品が増えてきました。しかし、保険商品は多種多様で、加入条件も各社商品によってさまざま。あまり保険の知識がない方が、自分のニーズに合った保険商品を探すのは一苦労です。
 そこで、ニーズ別に、がん経験者でも加入できる保険について整理しました。

 がん経験者が保険を検討する場合、まずは、保険でどのようなリスクに備えたいかによって、2つに大別できます。
 1つは「万が一のときの死亡保障」、もう1つは「がんが再発・転移した場合の医療費の保障」です。

万が一のときの死亡保障をカバーできる保険は?

 一家の大黒柱ががんに罹患して、万が一のときの残された家族の生活費等、死亡保障を準備しておきたい場合などには、これらの保険に加入できれば安心です。
 具体的には、主に以下のような商品が挙げられます。

  1. 無選択型の生命保険(終身保険、定期保険)
  2. 引受基準緩和型の生命保険(終身保険、定期保険、収入保障保険)
  3. 一般の生命保険(ただし、がんに罹患して5年超の場合など所定の条件を満たす必要がある)

 原則として、生命保険に加入する場合には、保険の対象となる人(被保険者)の現在の健康状態や過去の病歴、職業などを告知しなければなりせん。保険会社はその告知をもとに生命保険契約を引き受けるかどうかを判断するわけですから、告知は正確に、ありのままを伝える必要があります。

 上記(1)の「無選択型」とは告知の必要がない商品で、いわゆる“誰でも入れます”というタイプです。ただし、無条件で加入できるわけですから保険料は高く、一般的な保険に比べて割高になっています。
 なお、「一時払い終身保険」など、保険金額によっては、職業告知のみ、あるいは告知が不要という商品もあります(ただし、入院中は申込み不可の場合もあり)。
 まとまった保険料が必要になりますが、その分、保険会社としてもリスクが比較的小さいため、加入条件が緩やかに設定されているわけです。

 続いて(2)の「引受基準緩和型」は、一般的な保険に比べて告知項目が少ない商品で、限定告知型とも呼ばれます。無選択型にくらべると保険料は割安ですが、それでも、一般的な保険と比べると割高です。無選択型よりも終身保険を中心に商品数は多く、最近では、定期保険や収入保障保険など、より高額な保障もカバーできる商品も登場しています。

 そして(3)は、一般の生命保険に加入する方法です。
 実は、一度がんと診断されると、基本的には経験者向けがん保険を除き、一般の「がん保険」あるいは「三大(特定)疾病保障保険」には加入できなくなります。しかし、終身保険などの死亡保険や医療保険は、最後にがんの治療をしてから5年超経過しているなど所定の条件を満たせば、一般の生命保険に加入できる場合があるのです。
 告知項目は各社商品によって異なりますが、これらの条件をクリアできれば、選択肢も増えますし、割安な保険料で保障を確保できます。

がんが再発・転移した場合の医療費に備える保険は?

 治療費やQOLを維持するための費用など、がん患者さんは、罹患後、何かとお金がかかることを実感しています。ですから、がんが再発・転移した場合の医療保障に備えたいというニーズは高いといえます。
 具体的には、以下のような商品が挙げられます。

  1. 無選択型医療保険
  2. 引受基準緩和型医療保険
  3. がん経験者向けがん保険
  4. 一般の医療保険・医療(がん含む)特約(ただし、がんに罹患してから5年超など所定の条件を満たす必要がある)

 まず(1)についての考え方は、前述の死亡保障と同じです。
無条件で加入できる分、保険料は割高で、しかも既往症や現在治療中の病気は保障されません。保障内容についても、1入院当たりの限度日数や通算限度日数が低く設定されており、加入から90日間は保障の対象外になっています。
 したがって、がんの再発・転移の備えには不向きですが、例えば、AYA世代のがん経験者など、まったく何も保険に加入しておらず「がん以外の病気やケガの保障が欲しい」という場合などに加入を検討します。

AYA:「Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人)」の略。一般的に15~39歳ぐらいまでの年齢層の人を指します。

 (2)について、がんの場合は「過去5年以内に悪性新生物・上皮内新生物で入院・手術」「悪性新生物・上皮内新生物等で診察・検査・治療・投薬中」などに該当しなければ加入できます。既往症の悪化やがんの再発・転移による入院・手術・通院等も保障されますし、保険会社も注力している分野ですので商品のラインナップも多く、がん経験者が加入できる可能性も高いでしょう。「A社がダメでも、B社で加入できる」といったケースもよくありますので、あきらめず、複数の商品に問い合わせてみてください。
 ただし、加入後90日間は保障対象外(撤廃している商品もあり)、1年以内に再発・転移等があっても、保険金が半額しか支払われません。もちろん保険料も割高です。

 先ほど、がんに罹患すると、一般のがん保険には加入できないとご説明しましたが、その例外が、(3)のがん経験者向けに開発されたがん保険です。ただし、取り扱っている商品数が少なく、乳がんなど特定のがん患者しか加入できないものもあります。

 最後に(4)について、基本的な考え方は死亡保障と同じです。病状によっては、診断書の提出や割増保険料の支払い、部位不担保(保険会社が定める部位に生じた疾病の治療を目的とする入院や手術について、給付金の支払い対象とならないこと)を付加することで、一般の医療保険等に加入できる場合もあります。

 上記(2)の引受基準緩和型保険は、保険会社のウェブサイトに掲載されている告知項目を見れば加入条件が確認できるため、加入の可否が判断しやすいのですが、通常の医療保険等は、審査を受けてみないことには判断がつきません。
 そのうえ、医療の進歩による告知項目の見直し等で、以前は加入できなかった方でも加入できるようになったケースもあります。
 いずれにせよ、自己判断しないで、保険会社等に確認や相談してみることが大切です。

無選択型・引受基準緩和型・一般の保険の特徴の比較一覧(2018年10月現在)
無選択型 引受基準緩和型 一般の保険
告知 告知不要 一般的な保険に比べて少ない(3~6項目) おおむね5~10項目
保険料 割高(一般の保険に比べて約3倍) 割高(一般の保険に比べて1.5倍~2倍) 保険会社によって異なる
加入可能年齢 高め(40歳以上などが中心) 高め(30歳以上などが中心) 0~80歳程度
保険期間 定期型、終身型 定期型、終身型 定期型、終身型
持病・既往症の保障 保障なし 所定の条件を満たせば加入前に発症した病気等も保障 原則として保障
どんな人に向いている? 無保険でとにかく何か保険に加入したい人
がん(既往症)以外の病気やケガの保障が欲しい人
無保険でとにかく何か保険に加入したい人
がんの再発・転移に備えたい人
がん治療が終了して5年超が経過している人
(作成:黒田尚子)

<執筆者> 黒田尚子

ファイナンシャル・プランナー(CFP®資格)
CNJ認定乳がん体験者コーディネーター
消費生活専門相談員資格

1998年FPとして独立。2009年末に乳がん告知を受け、「がんとお金の本」(Bkc)を上梓。自らの体験から、がんに対する経済的備えの重要性を訴える活動を行う。著書に「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実」(セールス手帖社)など。聖路加国際病院のがん経験者向け「おさいふリング」のファシリテーターを務める。

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