治療を乗り越え、再出発
~力自慢のパパが選んだ新しい生き方~

(公開:2019年11月27日)

病院の診察室にて、緊張した面持ちで医師を見つめる小林タケル(41才)と妻のユミ(40才)。医師はカルテを眺めている。医師:うん、もうお仕事をしても大丈夫でしょう。タケル:本当ですか。手と取りあって、涙ぐみながら喜ぶタケルとユミ。ユミ:学校から帰ってきたら、チカにも報告しましょ。タケル:そうだな。

夜、自宅にて。家族3人、ソファでくつろぎつつ、とは言ったものの、と考え込むタケル。妻のユミと娘のチカは揃ってテレビを眺めている。なんとなく浮かない表情のタケルを見て心配するチカ。チカ(11才):お父さん、どうかしたの?タケル:いやぁ、次のお仕事はどんなのがいいかなって考えてたんだ。前は配送業に勤めてたけど、白血病の治療中に退職しちゃったし、体力的にも再開するのは厳しいからね。タケルは、大きな荷物を運んだり、運転している自分を思い出しながら話す。ユミ:そういえば、前にがん相談支援センターに行ったとき、ハローワークでやってる就職支援の案内チラシをもらったわよね。立ち上がって、チラシを取りに行くユミ。

ユミ:はい、これ。タケル:ありがとう。ユミからチラシを受け取るタケル。チラシには、離職中、休職中の方、治療や検査をしながらできる仕事を探してみませんか。治療に専念するために退職、ということもあるでしょう。一方、治療しながら、あるいは治療が終わってから(経過観察をしながら)、今とは違う職場で仕事を探したいということもあると思います。その際は出張ハローワークでご相談ください。と書かれている。チラシを読んで目を輝かせるタケル。タケル:これだ。ユミ:さっそく面談予約する?スマートフォンを片手に微笑むユミ。タケル:あぁ。A病院は少し遠いけど行ってみるよ。チカ:頑張れー。笑顔でタケルを応援するチカ。

がん相談支援センターの相談室にて。タケルとユミが少し緊張した面持ちで待っている。コンコンというノック音の後、部屋に入る相談員。相談員:こんにちは。武田と申します。本日はよろしくお願いいたします。タケル、ユミ:よろしくお願いします。相談員が席につく。相談員:さて、本日は再就職のご相談ということですね。タケル:いまの自分に合っていて、病気のことを理解してもらえるような就職先が、そもそもあるかを伺いたく。相談員:わかりました。それではまず、これまでのご職歴を教えていただけますか?タケル:20年ほど配送系の会社に勤めていましたが、白血病の入院治療の際に退職しました。先日B病院の先生に、働き始めても問題ないと診断されましたが、前職は重たい荷物を運んだり、一日運転したりと、体力勝負な職場だったので、これから同じ職業に戻ることは厳しいかなと思っています。

相談員:なるほど。病状はいかがですか?タケル:いまは寛解していて、定期的な経過観察のみです。でも、大きな体調不良はありませんが、免疫力や体力が低下しているので、無理はできません。相談員:たしかにお話を伺うに、いきなり同じ職業に戻るのはあまりオススメできませんね。うつむきがちに話すタケル。真剣な表情で、相槌を打つ相談員。タケル:ですが、長年の実務経験といま所持している資格を考えると、勿体ないなとも思っています。突然全く違う業界に行くのも不安ですし、できれば似たような業界だと嬉しいんですが。タケルの履歴書をみる相談員。資格・免許の欄には、普通自動車第一種運転免許取得、普通自動二輪車免許取得、フォークリフト運転技能講習修了と記載されている。

相談員:ふむ。そうですねぇ。相談員は考え込み、前職と同じ業界で探すにしても、そもそも業界的に労働環境が厳しそうだもんなぁ。安易に求人を紹介しても良いものか、と悩む。そして、そうだ、と何か閃いた相談員。相談員:小林さん、B病院に掛かってらっしゃるとのことでしたよね?タケル:?は、はい。相談員:私からB病院にもう少し詳細な就労条件に関する注意事項を確認してきますので、同意書にサインをいただいてもよろしいですか?タケル:わっ、わかりました。席を外す相談員。驚いて、顔を見合わせるタケルとユミ。

10分後。部屋に戻ってくる相談員。相談員:お待たせしました。B病院の医療ソーシャルワーカーさんが、その場で主治医の方に就労に関する注意事項を確認してくれました。呆気に取られているタケルとユミ。相談員:主治医の方いわく、小林さんはもう元気なので、どんな仕事をしても大丈夫、と太鼓判を押してくれましたよ。笑顔で説明する相談員。それを聞いて喜ぶタケルとユミ。相談員:ですが、やはり体力や免疫面を考えると、まずは倉庫内の商品管理から始めてはいかがでしょうか?タケル:それなら、資格もこれまでの実務経験も活かせそうだ。

一か月後。自宅から明るい表情で相談員の武田に電話をするタケル。タケル:武田さん、その際は大変お世話になりました。相談員:いえいえ。その後いかがですか?タケル:お陰様で、職場環境にも周りの人にも恵まれて、順調です。仕事に取り組みながら笑顔の同僚と話している自分を回想するタケル。相談員:それは良かったです。嬉しそうに話す相談員。タケル:求人の紹介だけでなく、履歴書や職務経歴書の書き方や、面接のアドバイスまでいただいて、本当に助かりました。面接練習の様子を思い出すタケル。

タケル:研修も終わって、来週からは本格的にフルタイム勤務になるので、一層頑張ります。相談員:お身体にはご自愛くださいね。応援してます。タケル:はい。ありがとうございました。電話が切れ、伸びをする相談員。相談員:さて、今日も頑張ろう。一方タケルは、受話器を置き、にこやかな表情を浮かべる。チカ:お父さん、電話終わったー?早くお買い物行こうよ~。タケル:あぁ、すまんすまん。支度はもう終わったか?チカ:うん!

タケル:荷物取ってくるから、靴履いてて~。急いで支度をするタケル。玄関で待つチカとユミ。チカ:ねぇ、お母さん。ユミ:ん?なぁに?リビングからタケルの「あれー、車のカギは?」という声が聞こえてくる。チカ:お父さん、元気になって良かったね。ユミ:ふふっ、そうね。嬉しそうにチカとユミが微笑み合う。お待たせーと玄関へ向かうタケル。家族3人笑顔で歩く。タケルは、病気への理解ある職場と出会えてよかった、と安堵し笑う。